2005-06-16

ビヨンド  [by miyachi]

ビヨンドと言う写真集(?)を買う。2004年までに惑星探査機が撮影した太陽系の写真に画像処理を加えて高画質化したものをまとめたものだ。5880円もするが1回飲みに行ったと思えば我慢できるし、眺めているだけで太陽系を旅行した気分になれる事を思えば安い!と自分を納得させる(笑)

この本を知ったのはdokuさんのブログだ。トラックバックしときましょう。

ページを開けると巨大惑星の息をのむようなアップ画像や、虚空に浮かび「はやぶさ」が今も目指している小惑星や、異星(火星)の風景が並ぶ。ほとんどが機械の目を通した風景ではあるが、そこには知的探究心を満たしてくれる何かがある。先日「のぞみ」に関する松浦さんの本を読んだばかりなので、惑星探査機も何だか身近に感じられます。

あぁ何だかこんな説明をしているのも馬鹿馬鹿しいです。見てください!きっと欲しくなる事間違い無しです。でも私が買った八重洲ブックセンターには1冊しか無くしかもビニール封されてました。中を開けるようにしておけばもっと売れると思うんだがなぁ…

宇宙を楽しむと言うところではもう1つ。先日Okaくんに教えて貰ったんだけど、メガスターから家庭用プラネタリウムのホームスターが7月に販売されるとの事。家庭用ながら何と1万個もの星が投影されるという。素晴らしい!お値段は約2万円。最新の投影画像を見ると天の川もはっきりと判る。現在入手は困難らしいが発売元のセガトイズには頑張って欲しいですね。店頭で見かけたら衝動買いしちゃいそうです(^^;
2005-06-16 14:06:44 - miyachi - - [宇宙開発] -

2005-06-13

松浦本2冊読了  [by miyachi]

松浦さんの最新刊2冊を読了したので簡単に感想など。

1) 恐るべき旅路——火星探査機「のぞみ」のたどった12年

分厚い内容でじっくりと読み応えのある1冊です。のぞみことPLANET-Bを、日本で最初の惑星探査機としてのそもそもの生まれからの紆余曲折や色々な制限からの奮闘が事細かく説明されていて、ISASを理解する事にも役立ちます。

技術者として興味深いのはプロジェクト管理方式で、NASAをお手本としたNASDA方式と、独自のISAS方式でしょうか。そう、これは言い方を替えると、システム工学的アプローチと職人気質的アプローチの違いにもなるのでは無いかと私は考えます。システム工学的アプローチはプロジェクトが巨大になればなる程有効なアプローチですが、予算も人月もかかります。それに比較して個々人の資質に依存する職人気質的アプローチを使えば、小さなプロジェクトであればある程無駄が無くなり有効なアプローチとなります。職人気質的アプローチを信奉する私としてはISASには複雑な親近感を覚えたりしました(笑)

しかしながらPLANET-BではこのISAS方式で運用できる限界近い大きなプロジェクトであったと書かれています。人数的にどの程度が限界なのか個人的には興味があったりしますね。いずれにせよ他の面でも「限界近い」事はトラブルの1つの要因ではあったようです。何かを犠牲にしてでも安全性の確保をする事はやはり大事ですね。

他にも「技術は人につく」「システム・エンジニアの仕事」「目は高く手は低く」等の章は頷きつつ、技術屋としてとても共感の持てる内容が満載されています。技術屋を目指しているなら一読の価値はあります。その意味でも良書です。

特に「技術は人につく」は私の信念でもあります。うちの会社は技術を売る会社な訳ですが、これはすなわち技術者のノウハウを売る会社だと言い換えても良いでしょう。売るべきは技術では無く「人」なのです。

閑話休題。PLANET-Bに話を戻しましょう。この本のハイライトは実は技術的な部分には無いと考えています。では何か。それは「のぞみ」に託された「二十七万人分の想い」でしょう。のぞみでは「あなたの名前を火星に」キャンペーンが行われており、縮小コピーされた二十七万人分の名前が搭載されていたのです。本書のちょうど中盤に応募はがきのコメント欄に書かれたメッセージがまとめられています。正直言って私はここで目頭が熱くなりました。PLANET-Bはただの機械です。しかしそれが「のぞみ」と命名され二十七万人の名前と共に宇宙を飛翔している時には、ただの機械では無く生きた想いが詰められた何か別の物になっているのでは無いかと思えてきました。

これは今後の宇宙開発にとってとても大切な事では無いかと読後思えてきました。宇宙開発の現場にいる方や我々のような一部マニアはいつも「どうすれば一般の方に宇宙開発に興味を持って貰えるのか?」と悩み苦しんでいます。しかしこれを見ると「誰でも星の世界に夢を持ち興味を持っている」事が判ります。後はそれを具体的で身近にする「何か」を提案できれば宇宙開発への理解は進むのでは無いでしょうか。もっともこれはビジネスでは無く「宇宙科学」を探求しているISASだから出来た事かもしれませんが。

いずれにせよ本書に詳しく書かれているように、PLANET-Bは「のぞみ」と名前を変え、二十七万人の想いを乗せて宇宙を駆け抜けました。結果としては火星への到着は出来ませんでしたが、そこに込められた想いや得られたノウハウと言う、金額に出来ないものが残ったのでは無いでしょうか。それは引き継がれて行きます。今ははやぶさことMUSES-Cが、のぞみのノウハウを生かしまた新たに「星の王子様キャンペーン」による八十八万人もの名前と共に宇宙を飛んでいます。その中にはうちの家族の名前も入っています。私も「はやぶさ」の航海の無事を祈っています。

2) スペースシャトルの落日——失われた24年間の真実

さてこちらは一転して辛口の本です(笑) いや松浦さんらしく正面から問題の本質を抉り出しており、ここまで来ると気持ちが良いです。とは言え辛口のコメントの先には「これからの事」に関する考察をすすめているところが、他のNASA賛美自称アナリスト氏(誰とは言わんが中冨信夫氏…言ってるし(^^;)とは違うところでしょう。きちんとした考えの道標として本書は役立てるべきでしょう。なおこの本と一緒に読むべき記事がある。日経BPの松浦さんの「問題山積のJAXA宇宙開発長期ビジョン」に関する以下の4本だ。

 (1)選択も集中が生かされていない総花的内容
 (2)有人宇宙分野で継続してしまった戦略なき対米追従
 (3)再利用とスペースプレーンという先入観から抜けきれず
 (番外編):研究だけだった旧NALをいかにしてJAXAへ統合するか

ここでも本書で書かれていた結果考えるべきテーマである「日本のこれからの宇宙開発方針」に関する参考になる内容が書かれている。しかしこれらを考えれば考える程、官主導の現在の方針決定プロセスには悲観的になってしまいます。明快なビジョンを持ったリーダーが不在である、または存在が許されないような日本の現状は何も宇宙開発に限らず、政治を含めて日本の問題点であろう。もちろん独裁的にならず独走も許さないと言う面で見れば良い面であるとも言えるのかもしれないが…

見方を技術的な視点に変えてみましょう。ってここまでスペースシャトルとは直接的には関係無い事ばかり書いてますね(笑) 結局はスペースシャトルの失敗は根本的なコンセプトの問題。つまり再利用への拘りの悪影響面が指摘されています。これは何も宇宙開発に限った話ではありません。ソフトウェアでも最初のコンセプトは大事です。そこが正しいのか間違っているかがその後で長く使われるか使われないかの境目になっているとも言えるでしょう。悪い例としてスペースシャトルを見るのも技術屋としては意味がある事でしょう。失敗からは何かを学ばないと丸損になってしまいます。技術屋は失敗の責任を追及するのでは無く、純粋に何が悪かったかを認識する事こそが大事なのでは無いかと思います。と言うところで時間が無いので今日はここまで。
2005-06-13 13:08:54 - miyachi - - [宇宙開発] -

2005-06-01

趣味と仕事  [by miyachi]

このタイトルを書くのはやはり宇宙仲間であるほったさんのホームページにある同じタイトルの文章があるからです。詳しくはそちらを読んで頂くとして、要点を抜粋してみましょう。

わたしの友人にピアニストがいます。その友人と話をした時のこと。
「ピアニストになってる人って、小さい頃から音楽が好きで、大きくなって夢が叶ったぁ~! っていう人が多いの?」
と訊いたところ、
「う~ん・・・」
としばらく考えた後、私にとって意外な答えが返ってきました。

「小さい頃からピアノ“しか”やってなくて、ハタと気がつくとピアノしかできなくて・・・、という人が結構いる。」

ということですから、音楽を生業(なりわい)としている人に、軽々に予断で以て、
「いいですねぇ。好きなことでお金が稼げて。」
などと言うのは禁忌なんだそうです。


なるほど。で宇宙開発業界でも同じであり、好き嫌いは別にしてその道のプロである事が誇りになると。

さて翻って我が身を見てみましょう。う~ん私って好きでプログラマをやっているよなぁ(^o^;; ソフト業界では大多数とは言いませんが同じようなプログラマは結構いると思います。では先のピアノ演奏者と何が違うのでしょう?それは自分の意思の違いもあるように思います。私がプログラマを目指したのは大学時代にマイコンに触れた事がきっかけで、好きでプログラマを目指しました。ピアノ演奏を小さい子供が始めるのはやはり親の意思がはたらいているのでは無いでしょうか。

プログラマ以外に同じような状況なのはクリエイティブ系の仕事の方は同じような人がいるかもしれません。プログラマもクリエイティブ系に近いのかもしれません。他にはほったさんも書かれていますが自動車・オートバイ業界のエンジニアも近いのかもしれませんね。これらの業界に共通しているのは「個人でも趣味でも出来る仕事」かもしれません。フリーのプログラマやデザイナやバイク技術者はいますし、趣味のプログラマやデザイナやバイク技術者もいますよね。でもフリーの宇宙技術者や趣味の宇宙技術者は…皆無?そもそも個人でどうこうできるレベルの仕事では無いですね(^-^;;

「いいですねぇ。好きなことで・・・」

と私が言われたら「はい。ラッキーだと思ってます!」と答えてしまうでしょう(笑)

小さな会社や個人で事業をやっている技術者には趣味と仕事の区別のつかないケースもあるように思います。問題は例えば宇宙開発であれば、このような小規模な技術者集団が仕事をする余地が無いところにあるのではないかと思います。ピアニストのケースは個人の意思の違いでしょう。

私が目指すのはプログラミング・マニアが集まり、他の集団より優れた成果を短時間で実現できる技術力を持ったチームの実現です。純粋な宇宙業界では無いかもしれませんが、これは例えば昨年民間初の宇宙到達を果たしたスケールドコンポジット社であったり、ロッキードにあった全盛期のスカンク・ワークスにも共通する物があるように思います。

では現在の日本の宇宙開発でこれが出来ないのはなぜか?やはりこれはベンチャー企業と言う風土やスケールが日本には根付いていない点が大きいのように思います。小さな会社だけどやりたい事を好きにやれる自由がある。それがベンチャーの醍醐味かもしれないと思うのでした。株式公開を果たして大儲けするのはベンチャーの醍醐味としては邪道な気がしますね(^_-)
2005-06-01 13:16:44 - miyachi - - [宇宙開発] -